結論:無料版のChatGPT・Geminiは、既定では入力した内容が学習に使われ得ます。法人契約版(ChatGPT Business・Enterprise、GoogleワークスペースのGemini)は既定では学習に使われません(契約・設定によります)。営業が私物アカウントや無料版に商談データを入れている状態は放置せず、学習させない設定、過去データの扱い、法人版への移行、利用ルールで対策します。
営業が成約のために、ChatGPTやGeminiの無料版や私物アカウントを使い、顧客名や商談メモをそのまま入力している。よく聞く話です。便利だからこそ広がりますが、入れた情報がどこへ行くのかは見えにくく、後から不安になります。
無料版に入れたデータは学習されるのか。もう入れてしまった商談データはどうなるのか。法人版にすれば安全なのか。この3つが、相談を受けるときにいちばん多い問いです。それぞれに公式情報があり、答えは「設定と契約の形しだい」で変わります。
この記事では、営業組織のAI活用支援・生成AI研修を行っている当社、株式会社AnataAIが、無料版ChatGPT・Geminiの学習リスクと、法人で取るべき設定・線引きを2026年6月時点の公式情報をもとに整理しました。無料版と法人契約版の学習仕様の違い、ChatGPTとGeminiの学習させない設定、すでに入れたデータの扱い、移行の判断材料、配るべきルールまでを扱います。

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営業が無料版・私物アカウントに入れた商談データはどこへ行くのか
結論:営業が顧客リストや商談メモを無料版や私物アカウントに入れている場合、その情報は会社の管理外で残る状態になります。まずは「誰が、どのアカウントで、何を入れているか」を把握するところから始めます。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)も、クラウドのAIサービスに営業秘密などの業務情報を入力しないよう注意を促しています。出典:IPA(AI利用者のためのセキュリティ豆知識)。営業の現場で実際に何が起きているかを、無料版の既定の扱いから順に見ていきます。
無料版(個人利用)の既定の扱い
無料版のChatGPTは、既定で入力した会話がモデルの学習に使われ得ます。無料版のGeminiも、既定で会話がサービスの改善に利用され得ます。どちらも個人で使う前提のサービスで、何も設定しなければ「品質改善のために会話が使われる」状態が初期値です。つまり、営業が無料版に入力した商談の内容は、設定を変えていなければ学習の対象になり得ます。出典:OpenAI(Data Controls FAQ)、Google(Gemini Apps プライバシーハブ)。
営業の現場で起きていること|私物アカウントに入る顧客情報
現場では、会社が契約していない私物アカウントで生成AIを使い、顧客リストや商談メモ、提案書の下書きを入力するケースが起きています。会社が貸与した生成AIではなく、社員が個人で登録したアカウントを業務に使う動きは、シャドーAIと呼ばれます。問題は、それが無料の個人版である場合、入力した内容が既定で学習に回り得るうえ、会社からはその利用そのものが見えない点です。ChatGPTとGeminiの両方で、私物の無料アカウントを使っていれば、同じ構図で穴が残ります。
無料版ChatGPT・Geminiを「危険・安全」と単純化できない理由
結論:「無料版は危険、法人版は安全」という分け方は単純すぎます。ここでいう法人版とは会社の規模ではなく、契約している提供形態のことです。会社で使っていても、それが社員の私物アカウントや個人有料版なら、扱いは無料版と同じです。提供形態を正しく見分けることが、対策の出発点になります。
ChatGPT・Geminiでいう「法人版」は会社の規模でなく提供形態のこと
生成AIの契約には、大きく3つの提供形態があります。誰でも使える無料の個人版、個人が月額で契約する個人有料版、そして会社が契約する法人契約版(ChatGPTならBusinessやEnterprise、GoogleならワークスペースのGemini)です。学習の扱いが会社の管理下に入るのは、いちばん最後の法人契約版だけです。社員が個人で登録した無料版や個人有料版は、会社で使っていても扱いは個人版のままで、会社の管理は及びません。「会社で使っている」ことと「法人版を使っている」ことは別だと、まず押さえます。
ChatGPT・Gemini法人版でも設定と運用しだいで穴が残る
提供形態を法人契約版にそろえても、それだけで安心とは言えません。会社がBusinessを契約していても、営業が手元の私物アカウントで商談メモを入れていれば、その入力は会社の契約の外で起きます。設定や運用しだいで残る穴は、組織として何を決めるかという視点で考える必要があります。
無料版ChatGPTを学習させない設定と、すでに入れた過去データの扱い
結論:無料版ChatGPTは、データコントロールの設定で学習をオフにできます。ただしこの設定が効くのは、オフにした後に入力する分だけです。すでに入力した過去の商談データを後からまとめて消す手段は、現時点では用意されていません。だからこそ、設定を変えるだけでなく「これ以上は入れない」運用に切り替えることが要になります。
無料版を使い続けるなら、まず学習をオフにする設定を確認します。そのうえで、すでに入れてしまった分がどう扱われるかを正しく理解しておきます。
ChatGPTの学習をオフにする設定
ChatGPTでは、設定のデータコントロール(Data Controls)の中にある「Improve the model for everyone」をオフにすると、それ以降の会話がモデルの学習に使われなくなります。営業に無料版を使わせるなら、最低限ここをオフにしておきます。なお画面の表示名や項目の位置は変わることがあるため、設定画面で該当の項目を確認してください。出典:OpenAI(Data Controls FAQ)。
ChatGPTにすでに入力した過去の商談データの扱い
注意が必要なのは、この設定が将来の入力にしか効かない点です。オフにする前にすでに入力した商談データを、後からまとめて遡って消す手段は、現時点では用意されていません。以前は過去分の利用を止める申請の窓口がありましたが、2023年に受付を終了しています。問い合わせ自体はOpenAIのプライバシーリクエストの窓口(privacy.openai.com)から可能ですが、すでに学習に使われたデータを必ず取り除けると約束されているわけではありません。出典:OpenAI(Data Usage for Consumer Services FAQ)。「過去のものが消える」とは考えず、これ以上入れない運用へ切り替えることが現実的な答えになります。
ChatGPTの学習をオフにすると失われるもの
学習をオフにすると、会話の履歴が残りにくくなり、過去のやり取りを踏まえた返答や個人に合わせた最適化は弱まります。一時的なチャットを使い分ける手間も増えます。この不便さがあるために、設定を戻したり最初からオフにしなかったりして、せっかくの設定が形だけになりやすいのが実情です。ただし、商談データのように会社の機密を扱う用途では、履歴の便利さよりも入れない運用のほうが優先です。
無料版Geminiを学習させない設定と、オフ後も残るもの
結論:無料版Geminiも、アクティビティの設定で学習をオフにできます。Gemini固有の注意点は、オフにしても会話が最大72時間サーバーに残ること、そして安全のために人がレビューした会話は削除した後も別の経路で最大3年間保持され得ることです。学習を止めることと、データが残らないことは別です。
Gemini側も基本の考え方はChatGPTと同じで、設定で学習をオフにできます。違うのは、オフにした後にも残るものがある点です。
Geminiの学習をオフにする設定
Geminiでは、アクティビティの設定(現在は「Keep Activity」という名称で、以前は「Gemini Apps アクティビティ」と呼ばれていました)をオフにすると、それ以降の会話が学習やサービス改善に使われなくなります。ChatGPTと同じく、ここで効くのもオフにした後の分です。画面名は変わることがあるため、設定画面で該当の項目を確認してください。出典:Google(Gemini アクティビティの管理と削除)。
Geminiをオフにしても残るもの|72時間と人がレビューした会話
アクティビティをオフにしても、会話は安全性の確認などの目的で最大72時間サーバーに保持されます。さらに、安全のために人がレビューした会話は、アクティビティを削除した後もアカウントから切り離した形で最大3年間保持され得ます。これは学習を止めることと、保持やアクセスがゼロになることが別だという意味です。加えて、過去に入力した履歴を消すには、設定オフとは別に履歴の削除操作が必要です。「設定すればその瞬間に何も残らない」わけではないことを押さえておきます。出典:Google(Gemini Apps プライバシーハブ)。
法人契約版(ChatGPT・Gemini)の学習仕様と提供形態の比較
結論:会社の管理下でデータの扱いを統一できるのが、法人契約版の利点です。ただし「法人版なら何をしても安全」ではなく、私物アカウントを併用していれば、その入力には保護が及びません。
商談データを日常的に扱うなら、学習の扱いが会社の管理下に入る法人契約版が基本になります。なお、ChatGPT PlusやProといった個人有料版は、有料であっても既定の扱いは無料版と同じで、入力した内容が学習に使われ得ます。ここで言う法人契約版とは別物です。ChatGPTとGeminiそれぞれの扱いを見ます。
ChatGPT Business・Enterpriseの扱い
ChatGPTの法人契約版であるBusinessとEnterpriseは、既定で入力した内容がモデルの学習に使われません。データの取り扱いは会社とサービス提供者の間で結ぶデータ処理契約で定められ、管理者が利用状況を管理できます。会社として契約し、社員にこの環境を使わせれば、無料版で起きていた「入力が学習に回り得る」状態を解消できます。出典:OpenAI(Enterprise privacy、2026年6月時点)。
自社の規模でどのプランを選ぶべきかは、ChatGPT法人プラン比較で営業規模別に整理しています。
GoogleワークスペースのGeminiの扱い
GoogleワークスペースのGeminiも、既定で入力した内容がモデルの学習に使われません。データの取り扱いは会社とサービス提供者の間で結ぶデータ処理契約で定められ、管理コンソールから会社単位で設定を管理できます。Geminiを法人で使う範囲や活用の仕方はGeminiの法人での使い方で解説しています。出典:Google(Googleワークスペースの生成AIプライバシーハブ)。
法人契約版でも残る注意点
既定で学習されないとはいえ、扱いは契約条件や管理者の設定によって変わり得ます。「法人版だから何をしても絶対に安全」とまでは言えません。そして、会社がいくら法人契約版を整えても、営業が手元の私物アカウントを併用していれば、その入力には保護が及びません。提供形態ごとの違いを表にすると、次のとおりです。
| 提供形態 | 入力データの学習(既定) | 会社による管理・監査 | 商談データを入れた場合 |
|---|---|---|---|
| 無料の個人版(ChatGPT/Gemini) | 学習に使われ得る | 会社の管理は及ばない | 後から会社が消す・監査するのは難しい |
| 個人有料版(ChatGPT/Gemini) | 無料版と同じ扱い(個人契約のため) | 会社の管理は及ばない | 同上 |
| 法人契約版(ChatGPT Business・Enterprise/ワークスペースのGemini) | 既定で学習に使われない(契約・設定による) | 管理者が設定・利用を管理できる | 会社の管理下で扱いを統一できる |
表で押さえたいのは、会社で使っていても、それが私物アカウントや個人有料版なら、扱いは無料版と同じだという点です。管理者が学習を逆にオンに戻せるかどうかは公式に明示されていないため、ここでは触れていません。
営業組織に残る穴、個人の設定だけでは塞げない理由
結論:学習の設定を個人に任せるだけでは、営業組織には穴が残ります。私物アカウントや私物端末は会社が管理できず、退職時にはデータが持ち出される余地もあります。設定の不便さから、オフにしても元に戻されがちです。生成AIを組み込んだ外部ツール経由で商談データが渡る経路もあります。だからこそ、組織として何を決めるかが問われます。
ここまでの設定は、いずれも個人の手元での話でした。
営業の私物アカウント・私物端末は会社が管理できない
営業が個人で登録した私物アカウントや、私物のスマートフォンから生成AIを使っている場合、会社はその利用を把握も管理もできません。会社が法人契約版を整え、利用ルールを配っても、見えないところで私物アカウントに商談メモが入っていれば、対策は素通りされます。誰がどのアカウントで使っているかを会社が把握できる状態にすることが、組織としての出発点です。
営業退職時のデータ持ち出し・ChatGPT/Gemini履歴の残存リスク
私物アカウントで業務を進めていた営業が退職する場合、そのアカウントに残った商談履歴や顧客情報は、本人の手元に残り続けます。会社はそれを回収も削除もできません。アカウントを会社の管理下に一本化していないと、退職のたびに顧客情報が社外へ出ていく経路が残ります。
営業の生成AI設定を個人任せにすると形だけになる
最初はオフにしても、過去のやり取りを参照したくて元に戻す、新しい端末では設定し忘れる、といったことが起こります。設定を個人の判断に委ねている限り、組織全体で同じ水準を保つのは難しく、誰かのところで穴が開きます。
商談データが外部ツール・連携アプリ経由で渡る経路
生成AIを組み込んだ営業ツールや、顧客管理(SFA・CRM)と連携するアプリを使っている場合、商談データがそれらの経路を通って外部に渡ることもあります。本体の生成AIの設定だけを見ていても、こうした連携先の扱いまでは見えません。どのツールに何のデータが流れているかを、ツール導入時に確認しておきます。
無料版のまま使う線引きと、法人版へ移行すべき判断基準
結論:無料版のままでよいのは、顧客情報や機密を入れない一般的な調べものに限ります。顧客の個人情報や商談条件、契約のドラフトを日常的に入れるなら、法人契約版へ移行するのが現実的です。判断は会社の規模ではなく、入れるデータの種類と営業での使われ方で決めます。移行とあわせて、利用ルールの整備と教育まで進めると定着します。
最後に、どこまで無料版で許容し、どこから法人契約版へ移すかの線引きを整理します。
無料版のままでよいケース
顧客情報や社内の機密を一切入れない使い方なら、無料版のままでも大きな問題は起きにくいです。たとえば、一般的な業界知識を調べる、メールの文面を顧客名を伏せて整える、公開情報をもとに資料の構成を考える、といった使い方です。固有名詞や具体的な商談条件を含まない範囲に限って使う、と決めておきます。
法人版へ移行すべきケースの判断基準
次のいずれかに当てはまるなら、法人契約版への移行を検討します。判断軸は会社の規模ではなく、入れるデータの種類と使われ方です。
- 顧客の個人情報、商談の条件、契約のドラフトなどを日常的に入力している
- 複数の営業が横展開で使っており、入力する人数が増えている
- 入力した内容を、後から会社として確認・監査できる必要がある
- 営業が私物アカウントを業務に併用している
これらに当てはまるほど、個人の設定では塞ぎきれない穴が大きくなります。法人契約版に移し、アカウントを会社の管理下に一本化することで、扱いを統一できます。
営業向けAI研修と利用ルール整備、移行とあわせて進める
移行だけで終わらせず、入力してよい情報と禁止する情報の線引き、業務で使うアカウントの一本化、社員への教育まで決めると、対策が定着します。利用ルールの作り方は社内での生成AI活用とルール整備に、研修の選び方はAI研修とは?法人向けの種類・費用・選び方にまとめています。
まとめ|無料版ChatGPT・Geminiの学習リスクと法人での線引き
- 無料版や私物アカウントのChatGPT・Geminiは、既定では入力が学習に使われ得ます。法人契約版(ChatGPT Business・Enterprise、ワークスペースのGemini)は既定では学習に使われません(契約・設定によります)。
- ChatGPTもGeminiも学習させない設定はありますが、効くのはオフにした後の入力だけです。過去データの扱いは別で、ChatGPTは遡って消す手段がなく、Geminiはオフ後も最大72時間、人がレビューした会話は最大3年保持され得ます。
- 「法人版」は会社の規模ではなく提供形態のことです。会社で使っていても、私物アカウントや個人有料版なら扱いは無料版と同じです。
- 個人の設定任せでは、私物アカウント、退職時の持ち出し、設定の形骸化、外部ツール経由という穴が残ります。
- 顧客情報や商談データを日常的に入れるなら、法人契約版への移行に加えて、利用ルールの整備と教育まで進めることで定着します。
当社、株式会社AnataAIは、生成AIの活用・浸透を目的とした生成AI研修を提供しています。営業向けの利用ルールの整備と定着を外部に相談したい場合は、下記からお問い合わせください。
よくある質問|無料版ChatGPT・Geminiの学習リスク
Q1. 無料版のChatGPTやGeminiに入れたデータは学習されますか?
A. 既定では学習に使われ得ます。無料版のChatGPT・Geminiは、何も設定しなければ入力した会話がモデルの品質改善や学習に使われ得ます。
Q2. ChatGPTを学習させない設定の手順は?
A. 設定のデータコントロール内の「Improve the model for everyone」をオフにします。これでオフ以降の会話は学習に使われなくなります。画面の表示名や位置は変わることがあるため、設定画面で該当の項目を確認してください。
Q3. もう商談データを入れてしまった場合はどうすればいいですか?
A. これ以上入れない運用に切り替えるのが現実的な答えです。設定をオフにしても効くのは将来分だけです。ChatGPTでは過去に入力した分を遡ってまとめて消す手段は現時点でなく、問い合わせは可能でも必ず消えるとは限りません。Geminiは過去の履歴削除が設定オフとは別の操作になります。まず私物アカウントや無料版に商談データを入れるのをやめ、業務は管理下のアカウントに移します。
Q4. 法人版にすれば商談データは学習されませんか?
A. 法人契約版は既定では学習に使われませんが、扱いは契約・設定・運用によります。ここでいう法人版は会社の規模ではなく提供形態のことで、ChatGPT Business・Enterpriseや、ワークスペースのGeminiが該当します。私物アカウントを併用していれば、その入力には保護が及ばないため、「法人版なら絶対安全」とは言えません。
Q5. 営業に生成AIを使わせる前に何を整えるべきですか?
A. まずは入力を禁止する情報のリストを決めるところから始めます。顧客の個人情報や商談条件など、入れてはいけない情報を具体的に挙げて共有します。そのうえで業務で使うアカウントを管理下に一本化し、研修で現場に根づかせると定着します。
この記事を書いた人

村田 欣祥
株式会社AnataAI 代表取締役社長。2007年より人材ベンチャー、東証上場企業グループ会社の取締役社長を経て、2023年に株式会社ラクスへ入社。「楽楽精算」等の営業戦略に携わる。累計10年以上の営業組織マネジメントと経営経験を活かし、2026年にAnataAIを創業。
「営業職こそAIを武器に」を掲げ、現場目線の生成AI活用による営業DX・業務改善コンサルティングやAI研修を提供している。

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