結論:Copilotで何ができるかは、機能の数ではなく、社内にどんなデータが残っているかで決まります。この記事は、社内のメールやファイルにつながった状態のMicrosoft 365 Copilotを、営業の仕事で使う前提の記事です。
Copilotは参照データをこちらが探して貼り付けなくても、日々のメール、共有しているファイル、会議の記録、予定を読むことができます。ただ、それで自分の仕事の何が変わるのかは、なかなかイメージできないと思います。
今回は営業組織向けの生成AI研修を行っている当社、株式会社AnataAIが、Copilotを日々の仕事のどこで使えるのかを、商談の流れに沿って整理しました。
Copilotは何ができる?答えは社内に残っているデータで決まる
結論:Copilotは、自分がすでに見られるメール・ファイル・会議・予定・チームでのやり取りが参照範囲になります。どの記録を見て答えるかは、対象を指定して絞り込めます。ただしこれは、社内のデータにつながる追加ライセンスが付いている場合になります。
まず、Copilotが何を読めるのかを押さえます。ここが分かると、自分の仕事で何ができるのかを、機能の一覧に戻らずに判断できます。
Copilotが読むのは、自分がすでに見られるデータ
Microsoftの公式ドキュメントは、Copilotが取り込む社内のデータとして、利用者のメール、ファイル、会議、予定、チーム、組織の中の関係を挙げています(出典:Microsoft Learn「What is Microsoft Copilot?」)。ここでいうファイルには、表にまとめた案件の一覧のようなものも含まれます。
この社内側のデータをどう見るかについて、Microsoft公式サイトに掲載されている紹介動画で、日本マイクロソフトの担当者が数字を挙げて説明しています。生成AIが学習したデータは世の中の0.00017%と言われている、では残りの99.99983%はどこにあるのか?それはみなさんが持っている企業の中のデータだ、という説明です。動画の中では、その例としてメール、チャット、ファイル、予定表、会議の記録、売上のデータ、顧客のデータ、マニュアルが挙げられています。
見られる範囲は、本人の権限どおりです。同じ公式ドキュメントには、Copilotの利用は本人の権限の範囲に限られると明記されています。紹介動画でも、データはアクセスできる人しか見られず、それはCopilotに指示をしても同じで、そのデータをCopilotが学習することもない、と説明されています。
どの範囲を見て答えるかは、こちらで絞れます。公式ドキュメントも、対象を手で貼り付ける必要はなく、対象にするファイルを指定できると案内しています。「この会社との過去3か月のやり取りだけを見て」「この提案書だけを根拠にして」と指示します。範囲を狭めるほど、返ってくる答えは自分の用件に近づきます。
ただし、ひとつ前提があります。社内のメールやファイルを自分で貼り付けずに使えるのは、Microsoft 365 Copilotの追加ライセンスが付いている場合です。付いていない場合は、対象のファイルをその都度こちらから貼り付けることになります(出典:Microsoft Learn「What is Microsoft Copilot?」)。
Copilotは商談の前に何ができる?その会社との経緯を1枚にする
結論:データが何か月分も蓄積されているときは、範囲を伝えるだけで頼めます。ここで頼める例は、経緯のまとめ、相手の言っていることの変化、過去に出した提案の組み替えの3つです。
何か月分のメールと会議の記録から、Copilotが経緯と現在地を1枚にまとめる
「この会社とのこの半年のやり取りをまとめて」と伝えます。Copilotは、その会社とのメール、会議の記録、共有した資料を時系列に並べ直し、いつ何が決まって、いま何が未決のまま残っているのかを1枚にまとめます。担当が自分ひとりでも、途中で人が入れ替わっていても、同じ範囲に残っていれば同じようにまとまります。
効率化されるのは、商談の直前に受信箱と共有フォルダーを行き来する時間です。資料を開き直して自分で並べるより短く済みます。
同じまとめ方は、担当が代わるときにも使えます。1案件分の経緯を、引き継ぐ側がそのまま読める形にしておけば、口頭での申し送りが短くなります。読ませたい資料が決まっているなら、それを1か所に集めてから頼む手もあります。集め方はCopilot ノートブックの記事にまとめています。
同じ相手の過去のやり取りから、Copilotが言っていることの変化を出す
「この会社とのやり取りで、言っていることがどう変わったか」と聞きます。Copilotは複数月・複数回にまたがるやり取りを突き合わせて、変わった箇所だけを返します。
ここで見えるのは、相手の関心が移った場所です。半年前は費用の話ばかりだったのに、直近3回は運用を誰が持つかの話に変わっている。そういう変化は、1件ずつのメールを読み返しても気づきにくく、複数のデータを見て初めて分かります。次の商談で何から話すべきかが、ここで決まります。
過去に出した提案から、Copilotがたたき台をつくる
過去の自社提案、見積の前提、そのときの商談の記録は、すでにMicrosoft 365の中にあります。似た条件の案件を探して添付する手間はいりません。今回の相手の条件を伝えると、Copilotは過去の提案を組み替えたたたき台を返します。ゼロから書くのと違い、自社が実際に使ってきた言い回しや条件がそのまま残ります。
Copilotは商談の直後に、決まったことと宿題を分けられる
結論:記録が1件しかなくても頼めることはあります。その会議の記録1件から、共有できる議事録と、自分の宿題の一覧の2つを出せます。
会議の記録から、Copilotが決まったこと・持ち帰り・期限を分ける
使うのは、その会議の記録1件です。決まったこと・持ち帰り・期限の3つに分けるよう頼むと、Copilotはそれぞれに担当と日付を付けた一覧を返します。そのまま共有できる議事録になるので、会議のあとに一から書き直す作業が、内容の確認だけになります。
紹介動画では、Copilotが会議に参加して発言をその場で記録し、終盤には決定事項とネクストアクションを整理していく様子が示されています。会議が終わった直後に手を付けるほど、記憶と記録のずれが小さいうちに直せます。
同じ記録から、Copilotが自分の約束だけを抜き出す
同じ記録を、今度は別の頼み方で使います。「この会議で私が約束したことだけを抜き出して」と指示すると、Copilotは期限つきの宿題の一覧だけを返します。次の商談に、前回の宿題を片づけた状態で入れます。
Copilotはメールで何ができる?やり取りの流れごと下書きする
結論:メールでCopilotが読むのは、やり取りの流れそのものです。スレッドを開いたまま頼むと、そこまでの前提を踏まえた返信の下書きが返ります。十数通溜まったスレッドからは、まだ答えていないことだけを抜き出せます。どちらも、すでに自分の受信箱の中にあります。
メールで見るのは、1通ではなく1本の流れです。
Copilotがスレッド全体を読んで、返信の下書きをつくる
Copilotが読むのはスレッド全体です。最新の1通だけでなく、そこまでのやり取りを前提にした下書きが返ります。前回の見積の条件、相手が保留にした論点、社内で確認すると答えた項目。こうした前提を自分で書き写す手間がなくなります。
十数通のスレッドから、Copilotが答え漏れを拾う
十数通まで伸びたスレッドを開いたまま頼みます。返信を重ねるうちに、質問が3つ来ていたのに2つしか答えていない、という抜けも発生しがちです。そこで、まだ答えていない項目だけを拾うよう頼みます。
返ってくるのは、答え漏れの一覧です。長く続いた案件ほど、この抜けが相手の不信につながります。返信を書く前に1回確認するだけで防げるためおすすめです。
Copilotは受注と失注の分かれ目を、記録と数字から出せる
結論:振り返りでCopilotに読ませるのは、商談の記録と、案件の一覧を置いた表の両方です。文章だけでも仮説は立ちますが、数字を足すと仮説が具体になります。この2つから受注と失注の分かれ目を出してもらうと、自分では気づいていなかった共通点が返ってきます。ここで出すのは結論ではなく、次に確かめる問いです。
振り返りでは、文章と数字が別々に溜まっています。使うのは、社内のファイルとして保存してある案件の一覧に限ります。営業支援システムの中にある数字を直接見に行く話ではありません。
商談の記録と案件の一覧から、Copilotが受注と失注の仮説を出す
使うのは2種類です。1つは受注案件と失注案件の商談の記録、もう1つは表にまとめた案件の一覧で、期間・金額・接触回数が入っているものです。この2つを指定して、受注した案件と失注した案件の共通点と分かれ目を聞きます。
記録だけでも仮説は立ちます。ただ、数字を足すと仮説の輪郭がはっきりします。「初回から2回目までの間隔が2週間を超えた案件は、決裁者に会えていない」といった形です。文章だけだと印象で終わる話が、期間と接触回数という数字と結びつきます。
出てきた仮説を全部追う必要はありません。次の案件で確かめる問いが1つ決まれば十分です。1つに絞って、次の3件で同じことが起きるかを見ます。
前月と今月の一覧を比べて、Copilotが動いた商談を拾う
同じ形でつくった前月と今月の案件の一覧を指定します。2つを比べて、変わった商談だけを拾うよう頼みます。紹介動画でも、前月と今月のデータを並べて更新された商談を抜き出すよう頼み、変わった箇所が示される流れが説明されています。
返ってくるのは、動いた案件だけの短い一覧です。週次で全件を頭から見直す必要がなくなり、金額が変わった案件と、止まったまま動いていない案件に時間を使えます。紹介動画では、1万行以上の表からグラフや集計をまとめるのにかかる時間を3分と説明しています。
数字を別の様式に書き写す作業も、一覧がファイルとして残っていれば任せられます。紹介動画では、商談の一覧を参照して決まった様式を埋めるよう頼み、様式を変えずに必要な項目だけが入る様子が示されています。人が見るのは、埋まった中身が合っているかどうかです。
Copilotにできることは、営業以外の職種でも同じ形になる
結論:ここまでの使い方は、記録が溜まる業務であれば、データの名前を置き換えるだけで他の職種でも成り立ちます。営業の「商談の記録」は、人事なら「面談の記録」、情報システムなら「問い合わせの履歴」などでしょう。どの職種でも、データが溜まっている業務から始めるのが早いです。
記録が溜まる業務なら、データの名前を置き換えるだけで通じる
ここまでの使い方で、営業に固有だったのはデータの名前だけです。同じ位置に別の記録を置けば、そのまま成り立ちます。
- 営業:商談の記録
- 人事:面談の記録
- 情報システム:問い合わせの履歴
- 経理:月次の締めのやり取り
- マネージャー:1on1の記録
どれも、何か月分も溜まり、1件ずつ残り、やり取りの流れになるという点で同じです。マネージャーの使い方は管理職のAI活用の記事で、人事の業務での使い方は人事業務のAI活用の記事で解説しています。
Copilotはいらない、と言われる会社で起きていること
結論:Copilotを入れたのに使われない会社では、機能ではなくデータのほうで同じことが起きています。多いのは、探せる形になっていないこと、個人のやり取りの中だけにあって組織に残っていないこと、そもそもまだ溜まっていないことの3つです。どれも、記録を置く場所と名前を決めるところから動き出します。
ここでの話は、社内のデータにつながっている前提です。そのうえで使われない場合、原因はデータのほうにあります。
ファイル名と版が食い違っていて、Copilotが探せない
ファイル名と中身が合っていない。同じ資料の古い版と新しい版が並んでいる。人が探しても見分けられないものは、Copilotにも見分けられません。
問題は、見分けられないまま答えが返ってくることです。古い版と新しい版が混ざっていれば、古い方を根拠にした答えも返ってきます。しかし、Copilotの答えには、どの資料を見て書いたのかが情報源として一覧で表示されます。紹介動画でも、どのデータを見たのかを確かめる手順として、参照した社内のサイトや資料、会議、チャットが並ぶ画面が示されています。
読ませる資料を先に決めて、決まった役割を持たせたCopilotをつくる手もあります。つくり方はCopilotエージェントの記事で解説しています。
決まったことが、担当者どうしのやり取りで終わっている
値引きをどこまで認めたか、納期をいつに変えたか。担当者どうしのメールやチャットで決まって、そのまま流れていく。この状態だと、あとから別の人が同じ案件を調べても、Copilotは何も出しません。Copilotが読めるのは、その人が自分の権限で見られるものだけです。他人どうしの1対1のやり取りは、最初から見えていません。
やることは2つです。案件で決まったことをどこに残すか。それを誰が見られる場所に置くか。この2つを決めれば、次に調べる人のCopilotからも読めるようになります。社内に散らばった知識を使える形にしていく進め方は、営業ナレッジマネジメントの記事にまとめています。
まだ溜まっていない業務では、Copilotの出番が少ない
今日の1通しかデータが無い人が試すと、思ったほどいい内容は返ってきません。ここでCopilotそのものを判断してしまうと使われなくなります。
取れる手は2つです。データが溜まるまで待つか、すでに溜まっている別の業務から始めるか。新しく担当を持ったばかりの人でも、引き継いだ案件のメールと会議の記録は残っています。社内でいちばん厚く残っているところから試してみてください。
Copilotで何ができるかのまとめ
ここまでに挙げた、Copilotができることは次の9つです。
- 何か月分のメールと会議の記録から、経緯と現在地を1枚にまとめる
- 同じ相手の過去のやり取りから、言っていることの変化を出す
- 過去に出した提案を、今回の相手向けに組み替える
- 会議の記録を、決まったこと・持ち帰り・期限に分ける
- 同じ記録から、自分が約束したことだけを抜き出す
- メールのスレッド全体を読んで、返信の下書きをつくる
- 十数通のスレッドから、まだ答えていないことを拾う
- 商談の記録と案件の一覧から、受注と失注の分かれ目を出す
- 前月と今月の案件の一覧を比べて、動いた商談を拾う
当社、株式会社AnataAIは、社内で生成AIを使えるようにするための生成AI研修と定着支援を行っています。Copilotに絞った研修も可能ですので、お気軽にご相談ください。
Copilotで何ができるかについてよくある質問
Q1. CopilotとChatGPTの違いは何ですか?
A. 違いは、社内のデータに自分でつなぐ手間がいるかどうかです。Copilotは追加ライセンスが付いていれば、日々使っているメール、ファイル、会議、予定、チームでのやり取りが、こちらで貼り付けなくてもそのまま参照範囲に入ります。参照できる範囲と、対象を絞り込む方法は、本文の1つ目の章で説明しています。どの生成AIを使うかは、自社ですでに使える環境に合う1つを選び、営業の各業務で使い倒すのが早い進め方です。
Q2. 社内のデータにつながっていない状態でも同じことができますか?
A. 同じようにはできません。つながっていない状態では、社内のメールやファイルはその都度こちらから貼り付けることになります。開いている画面の内容をそのまま使えることもありますが、こちらの手が1つ増えます。この記事で挙げた使い方は、Microsoft 365 Copilotの追加ライセンスが付いていて、社内のデータにつながっている状態を前提にしています。
Q3. Copilotができないことは何ですか?
A. データが無いことと、自分に見えていないことはできません。記録が残っていない会議や、自分の権限では開けない資料は、Copilotの答えに出てきません。もう1つ、出てきた内容が元のデータどおりかどうかは、人が確かめる必要があります。Copilotの答えには参照した情報源が一覧で表示されるので、元のデータに戻って確かめられます。
Q4. Copilotのうまい使い方は、どこから始めるのがいいですか?
A. いちばんデータが溜まっている業務から始めてください。営業であれば、商談の前か、商談の直後のどちらかです。選ぶ基準は、こちらで用意するものが無いことです。すでに揃っているデータだけで足りる業務から入ると、最初の1回で使えるものが返ってきます。逆に、データをこれから集めなければならない業務から始めると、続きません。
Q5. 社内の機密情報が他の人に見えてしまいませんか?
A. もともと本人が開けない資料は、Copilotの答えにも出てきません。逆に、権限が広いまま付いている人には、見せる予定のなかった資料まで答えの根拠に入ります。社内へ配る前に、共有設定と権限の整理を済ませてください。
この記事を書いた人

村田 欣祥
株式会社AnataAI 代表取締役社長。2007年より人材ベンチャー、東証上場企業グループ会社の取締役社長を経て、2023年に株式会社ラクスへ入社。「楽楽精算」等の営業戦略に携わる。累計10年以上の営業組織マネジメントと経営経験を活かし、2026年にAnataAIを創業。
「営業職こそAIを武器に」を掲げ、現場目線の生成AI活用による営業DX・業務改善コンサルティングやAI研修を提供している。


